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2018年1月1日月曜日

カンパーニア:ナポリ、サンセヴェーロ聖堂博物館

年の初っ端に、私の知る限り、空前絶後の技量を表した彫刻を誇る場所から始めます。

ナポリは、スパッカナポリと言う街の心臓部に当たる古い地区にある小さな礼拝堂で、以前は入り口が分かり辛く、ナポリの喧騒にまぎれてうろうろする人が多かったのですが、最近この聖堂を博物館と位置付け、道まで整備しました。昔から知る者としてはちょっと残念です。隠れた物凄いものだったのに・・。

聖セヴェーロ聖堂には二つの傑出した見るべきものがあります。一つはバロック芸術の極限を示す、超絶技巧の極値を争ったような彫刻群、中でも、ヴェールを被せられた死せるキリストの横臥像は、美術史上、非常に名高い作品です。ジュゼッペ・サンマルティーノと名前からして南部らしい(聖マルタンの聖ヨセフ)彫刻家は、地元ナポリの芸術家です。他にももちろん作品はありますが、なんといってもこの作品が代表作で、どんな美術書にも載っています。(載っていない本はバロックや彫刻を扱っていないか、よほど薄いものでしょう)彼のキリストを取り囲むように、サングロ家の一族のお墓のために、様々な擬人像が、あっと驚く技巧で配置され、礼拝堂全体が舞台のようです。これぞバロックです。


イエスの身体、寝台、豪華な敷物など全てが白い大理石ですが、恐るべきはヴェールを通して透ける主イエスの御顔です。あまりの美しさに心を奪われます。


中心がサンマルティーノの名高い作品で、あまりに彼の作品が素晴らしいので周囲の作品は軽んじられていますが、一つ一つ見れば、どれも凄まじいのに気付きます。


呆れた凄さです。大理石のひき網です。網に気を取られて、天使の美しさや全体の空間、複雑な擬人像の意味など忘れてしまいます。

この空間は、ある意味でバロック彫刻空間の頂点をなすものでしょう。ローマのベルニーニによる壮大な初期バロックとは違った、より個人的で趣向を凝らした後期バロックの頂点です。

この礼拝堂を所有していたサングロ家の最後の人物は、不気味な謎の人物として後世にその名を残しました。何しろこの礼拝堂の地下には、究極の解剖学の人体モデルがあり、それには実際の血管などが使用されていると言うもっぱらの噂だからです。解剖学ではフィレンツェにも、内臓を露出したヴィーナスなど、恐るべき模型が多数存在します。でもここにあるのは身の毛もよだつもので、ライモンド・ディ・サングロは発明家、錬金術師、科学者、解剖学者、イタリア語学者、秘教主義者、フリーメーソンの重要人物であり、どこまでが本当か分からない話が伝わっています。サングロなんて血(イタリア語で血はサングエ)を連想させます。


これは礼拝堂の彫刻の一つで、ライモンドの像だと言われています。ひねくれた人だったのは確かです。この礼拝堂に財産をつぎ込むだけでなく、自らの実験室にも湯水のごとくお金をつぎ込み、ナポリ湾を滑走する馬車などの様々な物を思いつき、出版しました。当然経済は逼迫したものの、礼拝堂は仕上がり、自らの命も、実験で吸い込んだガスが元凶で尽きようとしていたのでした。あんな凄いものを残してくれて感謝します。

で二番目に見るべきものとは、全然見たくないけど彼の研究から生まれた人体モデルです。あまりに怖くて写真はアップしませんが、怖いもの見たさの人は、museo della cappella Sansevero とか Raimondo de Sangro で検索してください。よろしく。




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