美術家名や都市などブログ内を検索してね

2017年9月29日金曜日

イタリア人高校生が授業に参加

腱鞘炎なので更新してなくてすみません。でもマジックパッドを買ったから少しは楽になったのでちょっとづつ書くよ。

10月21日から始まる、首都大学東京オープンユニバーシティ、飯田橋校での初回授業にイタリアからの留学生が来てくれます。高校生だから講師じゃなくて、実生活を知るために呼びました。物凄く良い子で、めっちゃ気を遣ってくれます。昔からそう言ってるけど【どこかの外国が好きな人は、その国の気質を持ってる人】と私は思ってるから、彼もそういう意味で日本人ぽい。逆に私が、良くも悪くも日本人らしくないように。


飯田橋の授業は『西洋美術:イタリアの街』です。このところ連載してて、結構評判が良いんだけど、来年から純粋に西洋美術に戻ろうと思ってます。私もやっててイタリア行きたくてたまらなくなるのですが・・。

申し込みがまだの人で興味のある人は是非、大学へ連絡ください。

首都大学東京オープンユニバーシティ
https://www.ou.tmu.ac.jp/web/course/detail/1731I002/
電話:03-3288-1050(9~17:30)
Fax: 03-3264-1863

です。
南大沢教室では歴史の授業をやってます。
今期のテーマは「レオ十世と宗教改革」。どうぞよろしく。





2017年9月8日金曜日

イタリアの街:Cividale チヴィダーレ

Cividale dei Friuli:チヴィダーレ・デイ・フリウーリ
Friuli Venezia Giulia フリウーリ・ヴェネツィア・ジューリア州

チヴィダーレの名前を知っている人は大した人です!というか私が訪ねた時、人口1万人ちょっとの小さな街で出会った旅人は、全て研究者でした。訪問先の街で誰に出会うかには、非常に大きな差があります。例えばフィレンツェやヴェネツィアのようなスーペル・ウルトラ観光地ではうんざりする異常な数の観光者に出会います。特にサン・マルコとか駅周辺などはほとんどが観光者でしょう。そういった街でもちょっと離れたり、最大級に有名な場所でなければもう、閑散としたものですが・・。それにしても、私はイタリア中旅して回っていますが、チヴィダーレのような街は初めてでした。中世木彫象が専門のモル教授が主催する展覧会があったためとはいえ、遭遇した人々は全員が博物館、美術館の研究員や大学教授でした。



チヴィダーレは美術史の教科書(イタリアの教科書、日本の出版物にはほとんど記述はないでしょう)には必ず出てくる有名な街です。ロンゴヴァルドという蛮族大移動時代の、イタリアに建国した人々が残した、とても印象的な作品の中で最も知られた作品がここにはあるからです。私は初めて本でそれを目にした時からここを尋ねるのが夢でしたが、あまり行きやすい場所ではありません。そこでこの州を固めて見ようと旅を計画したのです。

フリウーリ・ヴェネツィア・ジューリア州では、日本では特に「トリエステの坂道」(須賀敦子著)のおかげでトリエステが知られていると思います。あまりイタリアらしくない街ですが、特にイタリア近代史においては重要ですし綺麗な街です。いつかトリエステの話もしたいですが、今はウディネから可愛い電車に乗って、チヴィダーレへ。


何しろ情報がない中駅前の近代的な工場を横目に、森や屋敷の庭に沿ってバールで聞いた方向へ向かうとその街はあります。中世には栄えても今は鄙びた、イタリアに無数にある小さな田舎の村です。それでも流石イタリアで、広場がいくつもあり立派な大聖堂と市庁舎(写真)があります。立っているのはシーザー、カエサル、チェーザレです。(何語読みしたらいいでしょうか?)古代ローマ帝国時代に北イタリアの蛮族対策のためカエサルが建国した街なのです。どの街でも必ず司教座聖堂へ入リます。が、ここのメインは博物館と王室礼拝堂です。考古学博物館には他では見られないロンゴバルドの品々が分かり易い説明とともに多数展示してあり、それだけで大満足です。私はこれらのデザインが大好きなので、複製アクセサリーの工房で、彼らの定番デザインである逆S字を購入。本物は宝石付きですが残念ながらそれは諦めます。写真は現在十分に使えるペンダントヘッドです。これらのものは7〜9世紀の物が中心で、いわゆる地中海デザインとは全く違ったものです。


最大の見所はペンモの祭壇。大理石の祭壇にパワフルで天真爛漫な、どうしてこんな下手な人が彫ったんだろうか?とも言えるとてつもないレリーフが目一杯掘られています。撮影の許可はもらいましたが、転載できないので載せられません。非常に残念です。現在はかすかに色が残っているだけですが、展示では時々、色彩を再現する投射が行われ、それを目にしたら二度と忘れられない迫力です。素晴らしい展示方法です。

もう十分来た甲斐があるのですが、もう一つの目玉、王室礼拝堂へ。ここは素晴らしい立地にあり撮影もできるので、ちょっぴり喜びを分かち合ってもらえます。


小さな礼拝堂ですが、王家の人々の書見台がそのまま残り、ロンゴバルド芸術の美の頂点と言われるレリーフを間近に見ることができます。時代により空間にも変更が行われたのは明白で、違った時代のフレスコなどが残っています。特別な空間を堪能して外へ出ると、そこは天国です。澄み切った空気と水に爽やかな太陽の光。北イタリアの小村の素晴らしさが凝縮しています。


ベネディクト会系修道院だった名残で、果樹園もありゆっくりできます。素晴らしい風景を堪能しながら、川沿いに小道を行くと城壁外の街へ出ます。そこには巡礼聖堂や13世紀の家などが保存されています。街の反対側には、おなじみ中世の悪魔の橋があり、違った地区へ。一部城壁と門が残る部分に、また別の広場があり雰囲気が変わります。人々は全く観光ずれしていなくて、時間は穏やかにゆっくり過ぎます。食に関しては山らしく木ノ実を使った料理が充実しています。今回はウディネから通ったのですが次回はぜひ宿泊したいと思っています。



2017年9月3日日曜日

「イタリアの街」は今年限り

首都大学東京オープンユニヴァーシティ、飯田橋校でこのところ連続して行なっている「イタリアの街」というテーマの授業は、一旦今年限りにします。

もともとこのテーマは長く参加してくださっている方からのリクエストで始めたのですが、なかなか楽しい内容で、自分でもとても気に入っています。何より、普通大学で行う授業は、実践的な内容は相応しくないと私は思っているので、旅の実践的な話など授業の中では避けてきました。しかし、今回のテーマでは街を紹介するのに、実際に自分が訪れる感覚で、建造物や町並みを組み立てました。なので飛行場や駅、列車など普段の美術史では決して触れることのない内容に多少触れますが、これが、現代イタリアの社会問題や技術などを紹介することにつながりました。最も顕著な例はパレルモの「ファルコーネとボルセッリーノ空港」です。生涯をマフィア撲滅運動に捧げた英雄の名前がつけられています。


博物館はイタリアのどんな小さな街にもあると言って過言ではないほどで、そこでは当然美術の話ができますし、町並みの変化や構造は歴史と深く結びついています。ですからずっと続けたいという気もするのですが、これをしていると、イタリアしか扱えず、西洋美術を紹介するのが、やはり本来の私なので、来年からは大きく西洋美術を基本に、様々なテーマに切り込みたいと思っています。

今年最後の10,11,12月の講座ではイタリア人留学生にもきてもらって出身地のインタヴューも考えていますので、今まで気になっていた方、イタリア旅好きは、ぜひ来てください。待ってます。