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2017年8月14日月曜日

映画:ブレンダンとケルズの秘密

題名:ブレンダンとケルズの秘密
監督:トム・ムーア他

第82回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート作品。

http://secretofkells.com/

今日から!
アイルランド、ケルト美術好きなら絶対行くべし!
東京は二箇所。私はコジク阿佐ヶ谷で見るよ!
ちょ〜楽しみ〜〜💓



2017年8月13日日曜日

本:聖なる侵入

題名:聖なる侵入
著者:フィリップ・K・ディック
出版:1982年 サンリオ

連休を使って一人ディック祭り。最初の題名がValisAgainだったことを考えると、確かに世界の終末、救世(神)についてのテーマは受け継がれている。というよりより鮮明に打ち出されているがこちらはずっと読みやすく小説らしい。かなりの量が会話で成り立っていることもあるが、真の愛が見つかるハッピーエンドが何よりも違っているところ。



アメリカ版の表紙は日本版より常に分かりやすいから、説明にこれを使用。何の絵かというと、地球外の御聖誕の場面。因みに「御聖誕」は美術図像では、赤ちゃんイエス、完璧な聖女である少女母マリア、人間界の父大工ヨセフ、それに牛馬がいたりする。が、ここでは病気で死に瀕しているエゴイスティックな27才のイスパノアメリカ系女性、内向的な音楽御宅の二人の移民(地球から逃れてきた)、と乞食のような老人エリアス(預言者エリア)。

幼児イエスの物語はマリアの物語以上に知られていない。というか聖典にはないんだけど、ここでは10歳のイエスが大活躍する。記憶障害のある可愛い少年がこの世界の創造者であるという、ディックならではのものすごい設定だし、いつものように聖書、様々な思想、世界背景に加え音楽や言語の知識まで必要とする内容だが、以外に話は単純で読みやすい。何よりも人間への愛、善を選択する自由意志の勝利という結末が、ディックらしくなく明るい。ある意味これが遺作となって良かったと思える作品。


2017年8月12日土曜日

本:ヴァリス

題名:ヴァリス
著者:フィリップ・K・ディック
初版:1982年
出版:サンリオ


数世紀経過し再読。ディックは学生時代にハマった作家でほとんど読んでいるが、中でもこの「ヴァリス」と次の「聖なる侵入」は最後の大作。数年後53歳で死んだ彼が死と文学、思想、宗教についてリアルに考えていたことが想像できる。初期の作品(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「流れよ我が涙、と警官は言った」他)のような感動は損なわれているが、それは彼の迷いかもしれない。背景の知識があれば何重にも楽しめる。

VALIS:巨大にして能動的な生ける情報システム

連休を利用して普段は読めない(普段は歴史、美術、宗教などに関する解説ものばかり)小説を読んだりする。特に今回は最終場面を見逃していた「パーソン・オブ・インタレスト」(アメリカのテレビドラマ)も見終わり、ディックがいかに先端を行っていたかを再確認。スノーデンに言われなくとも、このところのネット社会と個人情報の扱い、人工知能の発達と利用に関して、誰でも疑問、疑念に思う世の中だ。それを彼は1970年代から追求していたのだから時代がやっと彼に追いついた感がある。




それにしても再読しながら思ったのは、これほど知的ベースを要求するSF作家が大人気作家で、何本も映画化されている(日本語訳10本の内「ブレードランナー」「マイノリティーリポート」などは日本でも有名だと思う)という事実はどう捉えたらよいのだろう。ロックとドラッグが日常的な世界に住む似非知識人たちが主人公のディックの小説は、どこか二流の雰囲気を常に持ちながら、非常に読書家でなければついていけない作品なのだ。それに何より、単なる娯楽SFとは全く異なり真剣に社会を考察する。