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2018年3月27日火曜日

ナポリの旅ではベネヴェントを追加

9月の「イタリア美術と歴史の旅」では、二つのグループに分けてました。モリーゼ&プーリアの旅とナポリとその周辺です。

ナポリには見るものがあまりにも沢山あって、できるだけナポリだけに絞りたかったのですが、かの有名なフレスコ「飛び込む人」を見にパエストゥムと、大人気観光地アマルフィはチラ見するつもりでした。でも他の地も行きたいと言う希望があって、それならばカゼルタって手もあるけど、個人的に大好きなベネヴェントへ連れてゆきたいです。


ベネヴェントは、あちこち行った私に大変強い印象を与えた街です。初めて訪れた時はまだ勉強し始めたばかりでしたので、プーリアからナポリへ抜けるときになんの知識もなく寄ったのですが、後ろ髪を引かれる思いで街を後にしました。上の作品は、博物館にある近世のベネヴェントですが、このローマ以上かもしれない素晴らしい凱旋門は、今も健在です。


でもいつもの様に私が最も感動したのは、街の中央広場にある聖ソフィア聖堂です。司教座ではありません。司教座は私が寄った時(何年前か?とにかく昔)は修復中で、入れなかったのを工事の人に無理やり頼んで入れてもらったので、大聖堂の中はまさに工事現場でしたが、それでも実に興味深い発見が多々ありました。この聖ソフィアは小さい部類の聖堂ですが、しかし大変威厳がありただならぬものを感じました。


最初にファサードのルネッタ(下図:半円部分)にあるモザイクと彫刻が、気に入りました。何かとても厳かで、小さいながらも高貴です。残念ながら色はほとんど落ちていますが、着彩されていたのは推測できます。中に入るとさらに感動しました。聖堂自体が、完全ギリシャ系の集中様式で、細みの円柱にコリント式の柱頭が整然と円を描いています。


決めてはわずかに残るフレスコでした。ほとんど落ちてしまっていますが、残った部分の、迷いの無い線の力強さとデッサンの迫力はたまらなく魅力的で、誰もいない聖堂に一人ポツンとしていたのに、盛り上がりきりました。この素晴らしい作品は、間違いなく10世紀よりかなり前の、ギリシャ人の手による作品だと、勉強初めてまだ浅かった私ですが確信しました。私はオリジナル文献は読めませんが、美術作品の鑑識眼には自信があります。7〜9世紀初頭(研究者によって多少意見に差がある)のものと書かれていました。


これは洗礼者ヨハネの父になる前のザカリアです。彼と妻は長年子供を望んできましたが、高齢になっていきなり「あなたの願いは聞き入れられた」と天使に言われます。でもこんな高齢でありえないと疑ってしまうと、口がきけなくなってしまったのです。この絵は、口のきけない司祭ザカリアが、それを信徒にしめしているところ。堂内にはもう一箇所、受胎告知の天使が残っています。


中世の修道院では回廊は最も魅力的な場所。その聖ソフィアの回廊は博物館になっています。イタリアならではの、無名博物館の異常な素晴らしさを実感するでしょう。もっともっと説明したいけれど、それは現地で。私にとってはここだけでも再訪したい土地。


とっくに大聖堂も修復されているし、他にも重要な聖堂がいくつもあります。最後に歴史をちょっと。ベネヴェントは古代から開かれた都市でしたが、何と言っても571年から1071年までベネヴェント公国といい、ロンゴバルド人の最も重要な街の一つでした。司教座聖堂には明確にロンゴバルド芸術の跡を見ることができます。歴史中央地区は小さいですが、バラバラと離れた場所にローマの水道橋や、中世の修道院など、歴史的には非常に広い範囲を支配していたのが分かるところです。それに観光地嫌いの私には、観光に汚されていない落ち着いた街並みも最高で、ごく自然な食堂やカフェでゆっくり時間を過ごしたいです。

ナポリ行く人、どう?ちょと時間は使うけど、行きたいかな?



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