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2018年5月11日金曜日

ポジッリポ:世界で最もロマンチックな場所?

Posillipo(ポジッリポ)はナポリから車だと15分かからないで行ける場所にある街。歩いても1時間50分だそうで、海岸沿いのVia mare(その名も海通り)をサイクリングすれば最高に気持ち良いところです。

ポジッリポから見たベスビオ火山。左側の木の向こうにはナポリ湾。

私は行ったことがないし、正直行って美術的に価値の高い聖堂など無いから「世界一ロマンチックな場所」と思わないだろうけど、私はこの発言を何度もアメリカ映画やドラマで見ています。「クロッシング・ライン」(ヨーロッパ特別捜査チーム)でも、イタリア人役の捜査官がロマンチックになる💏場所として出て来ました。

確かに綺麗な所ですが、イタリアには海岸沿いの丘にできた街は、チンクエテッラ以外にも幾らでもあります。チンクエテッラが中世の貧しい漁師町なのに対して、こちらは古代遺跡と近代の貴族達の避暑地という感が強いですが。18世紀に盛り上がるグランド・ツアー時代には、イギリスやフランスなどから、貴族のボンが恥かしくない知識を習得するためにイタリアに長期滞在しに来ました。その多くが中南部イタリアに取り憑かれています。小説も書かれ、初期の映画の舞台にもなり、絵画ではポジッリポ派という画家達も生まれました。ナポリで集まって活動した彼らの作品は、ほとんど風景画です。

Antonie Sminck 1826

これは古代ローマ時代に土地の石で作られた洞窟です。自然なものではなく、古代に重要な港だったPausilypon(ポジッリポのギリシャ語名)の、港と他の街をつなぐ通路でした。770メートルに及ぶ洞窟は19世紀に整備され現在は、大ギリシャ遺跡地区に出られます。ちなみにギリシャ語の意味は「苦痛の休戦(停戦)」という意味で、要するに、嫌な事を忘れて疲れを癒してくれる場所、という事だったと思います。

皇帝の館、遺跡地区内

大ギリシャというのはマグナ・グラエキアの訳ですが、今のギリシャではなくイタリア南部のギリシャ植民都市を指します。南部イタリアには、現在のギリシャよりも状態の良いギリシャ文化の遺構があちこちに残っていますが、これもその一つ。館のこちらには円形劇場が見られ、古代ギリシャ人にとっ演劇がいかに大切だったかが分かります。

Palazzo degli Spiriti

写真を比較してください。この二枚の写真は同じ場所で今度は海側から見ています。古代ローマの遺跡ですが、中世を通じて「精霊達の館」と呼ばれて来ました。夕焼け時は特にロマン派の画家達にインスピレーションを与えたようで多くの作品があります。

Villa Volpicelli

ここではお屋敷はほとんど海岸沿いに建てられ、素晴らしい眺望がありますが、この館は特に海の上に立っているように見えるように、設計されています。

Palazzo Donn'Anna

この町で一番有名なお屋敷は、この発音しにくいドンナンナ(本当は詰まるのでもっと難しい)です。名前の意味は「女主人」です。1637年にナポレオン家のお姫様の結婚のため、当代最高のナポリの芸術家Cosimo Fanzagoが着工しましたが、住むはずだった公爵がスペインに帰ったり、女主人自身も死んじゃうし、革命下で破壊されたりして結局完成しませんでした。最初の姿に修復されたかと思うきや、ポジッリポが観光地として脚光を浴びると、道の拡張工事のため部分的に破壊されたり、今は高級ホテルになっています。ホテルにいながらビーチ状態みたいな場所などありますが、お部屋は現代的な意匠です。とにかくビーチっていう欧米人にはいいかもしれないけど、私たちはナポリに連泊するのでここには泊まりません。

Nisida

権力者のお屋敷続きでもう一つ。これは「ブルータスお前もか」のブルータスの屋敷があったニシダ(西田と変換されちゃいます)島です。ここで紀元前44年にカッシウスと、カエサル(シーザー、チェーザレ)殺害の計画が練られた。と書いてあります。その後ブルボン支配下で監獄になりました。ありがちです。でもこの距離ならば「パピヨン」(1973年の映画。スティーブ・マックイーンが無実の罪で投獄され、脱獄しようと頑張る。私にとってこの映画はイタリア語で見た初めての映画で、最後にマックイーンが島から海へ飛び込み、io sono vivoooo!(俺は生きている)と叫ぶシーンが忘れられません。)でなくとも泳いで逃げられそうです。橋は本土と結ぶ橋で、島の向こう側は見事な円形の湾になっていて、古代から素晴らしい避暑地だったと容易に想像できます。

Gaiola

ニシダ島の近くにガイオラもあります。これは島というより岩のような存在ですが、一応建造物もあり二つの島を渡る橋があって、夏のバカンスにはもってこいって感じ。陽気なとか明るいという意味の名を持つ島らしいですね。


この辺には潜ることができます。日本よりずっと水温が高いし、地中海は穏やかなのでダイビングをする人には憧れの場所でしょう。でもちょっと潜るだけで綺麗なので、私も別の場所でやったことがあります。写真はあちこちにある洞窟の一場面。こういうの見てると「世界一ロマンチックな場所」っていう意味もわかる気がします。

Villa Roccaromana

ローマ人の岩館です。このように足元がどこか別の街に繋がった巨大なトンネルになっていたり、一部に海が入り込んでいたりするところなど、まるで古代の文書を読んでいるような気になります。

9月の「ナポリとその周辺」の旅では一日使って行って見たいと思っています。できれば洞窟を通り抜けてクーマエまで歩きたい。クーマエは西洋古典文化の父ウェルギリウスの「アエネーイス」に登場する巫女シュビラが神託を授ける場所!システィーナ礼拝堂のミケランジェロも描いています。

Michelangelo, cappella Sistina Citta di Vaticano

Cumae

古代の神託を体感した後、現代のナポリへ帰ります。
旅人募集:romanici@gmail.com へメールください
#イタリア #旅


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