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2017年8月12日土曜日

本:ヴァリス

題名:ヴァリス
著者:フィリップ・K・ディック
初版:1982年
出版:サンリオ


数世紀経過し再読。ディックは学生時代にハマった作家でほとんど読んでいるが、中でもこの「ヴァリス」と次の「聖なる侵入」は最後の大作。数年後53歳で死んだ彼が死と文学、思想、宗教についてリアルに考えていたことが想像できる。初期の作品(「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」「流れよ我が涙、と警官は言った」他)のような感動は損なわれているが、それは彼の迷いかもしれない。背景の知識があれば何重にも楽しめる。

VALIS:巨大にして能動的な生ける情報システム

連休を利用して普段は読めない(普段は歴史、美術、宗教などに関する解説ものばかり)小説を読んだりする。特に今回は最終場面を見逃していた「パーソン・オブ・インタレスト」(アメリカのテレビドラマ)も見終わり、ディックがいかに先端を行っていたかを再確認。スノーデンに言われなくとも、このところのネット社会と個人情報の扱い、人工知能の発達と利用に関して、誰でも疑問、疑念に思う世の中だ。それを彼は1970年代から追求していたのだから時代がやっと彼に追いついた感がある。




それにしても再読しながら思ったのは、これほど知的ベースを要求するSF作家が大人気作家で、何本も映画化されている(日本語訳10本の内「ブレードランナー」「マイノリティーリポート」などは日本でも有名だと思う)という事実はどう捉えたらよいのだろう。ロックとドラッグが日常的な世界に住む似非知識人たちが主人公のディックの小説は、どこか二流の雰囲気を常に持ちながら、非常に読書家でなければついていけない作品なのだ。それに何より、単なる娯楽SFとは全く異なり真剣に社会を考察する。




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