さて、イタリアという国は現在の意味で国家となったのは1860~70年にかけてで、非常に新しい国です。しかしイタリア半島の歴史は、ペルシャなどの人類の文明の発祥地ほど古くはないにしろ、ヨーロッパの中では最古を誇り、それが古代ローマやルネサンスを通じて近代につながっているという点で、最も重要だし、複雑で奥深く、芸術的には圧倒的に見るべき価値のあるものが多い魅力的な国です。
Santuario di Castelpetroso
ゴシックは、野蛮人という言葉とは裏腹に、とても規則的な形を基本に作られています。それに対して、野蛮人と呼ばれたロンゴバルド人は、洗練を極めたギリシャ、ローマの彫刻のふんだんにあるイタリアへやって来て自分たちの聖堂を建てたら、こんなになっちゃいましたーっ!っていうような、最高の聖堂が下の写真です。何を言ってるのか、分からない人は、ま、授業に出てもらうと嬉しいのですが・・。
S.Maria della Strada
この最高のルネッタ(半円形の建築部分で、入り口の上部)は、私の憧れの聖堂のものです。これぞロンゴバルド芸術の力強さ、というか奔放さ、というか下手だとか拙いとか、そんなものは吹き飛ぶ、勢いのある美術です。行きにくい場所に、ポツンと建っていて、ファサード(建築物正面)やところどころに、天然としか言いようのない彫り物がしてあります。見たくてたまりません!イタリア語ですが写真が見られます。
ロンゴバルド美術を見ると、いつも思うのですが、もっと上手な人はいなかったのだろうか?と。ロンゴバルド美術にも、もちろん色々あって、チヴィダーレの女性像は、きちんと整っています。あれは後期の作品でゴシック色が感じられますが、なぜか私にはあまり魅力的ではありません。ルッカやベネヴェントには野生的でありながらも、芸術的な線と形態の作品が見受けられます。でもモリーゼの作品はどれも本気で素人臭く、当時の状況を想像したくなります。逆に素人臭い方が民衆の好みや考えは反映されやすいので面白い面もあります。大芸術家というものは常に時代を超越しているので。
San Giorgio Martire
これはまた別の聖堂です。殉教聖人に捧げられたロマネスク聖堂ですが、先に挙げた「路上の聖母マリア」聖堂よりさらに、過激に破天荒になっています。ここではもう動物が主役どころか、人体表現はありません!実はこのルネッタはこの聖堂の中ではまとまった方で、もっと構図も何もあったもんではない、さらに迫力の浮き彫りもあるのです。とても西洋美術とは思えぬ自由さです。きっと昔は他の地域にもあったのが、偉そうな正統派の美術に作り変えられてしまったのかもしれません。こういったヨーロッパ美術の横道から、すっかり道を外れた、愉しい聖堂がここモリーゼにはまだまだ残っています。
San Vincenzo al Volturno
旅について:もしモリーゼに行きたいと思ってくれる人がいれば、ぜひ行きたいと思います。数人まとまれば車をチャーターできるので。モリーゼの場合はナポリと組み合わせるとかした方がいいかなとも思います。大芸術と、その正反対の民衆美術、大都会の喧騒と自然と中世の小道の両方が比較できるから。
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