Monte Sant'Angelo
ヨーロッパを超えトルコに至るまで、世界に大天使ミカエルが降りたと言われる聖所がある。一般にはフランスのモン・サン・ミシェルが有名だが、イタリアの方が二つもあるし、歴史もずっと古い。
Santuario di San Michele Arcangelo
中は違った時代の空間が、ごっちゃになっている。右奥が最も重要な大天使像のある場所で、左は中世に作られた礼拝堂。この他にも一般には入れない空間もある。
ここは、この大天使ミカエルの聖所の周辺にできた、いわば門前町だ。中世のヨーロッパの都市の形成にはこの他に、市が立つ場所にできた街、司教や領主が意図して作った街とかもある。イタリアの場合、北方と違い、古代ギリシャやローマの街が既にあった場合が多いが、ここは違う。6世紀から巡礼が訪れていたという、完全に中世の街だ。上空から見ると、小さな同じ形の家が整然と並ぶ麓の門前町がわかる。丘の頂上に聖所がある。
頂上部分、中世の街の門が見える。この橋を渡って入ると、中世人の気持ちが少しは味わえる。バスを乗り継いで麓の街で降り、丘を登ってここまでたどり着くと周囲には何もなく、ミラノやローマでは考えられない澄み切った空気を実感できる。
丘の上の狭い場所に、中世初期から盛期にかけての聖堂が幾つかある。数世紀にわたって改造されたおかげで、いくつもの聖堂がくっついてしまっているが、建築物はロマネスクならではの単純だが力強い造形だ。一歩中へ踏み込むと、フレスコなど剥げ落ちてしまっていてもクーポラに感動する。ノルマン系のロマネスク聖堂では大抵そうだ。いびつな円が、よく落ちないで何世紀も耐えたものだと、何かけなげな印象を与える。
Tomba di Rotari
鉄腕と言われたノルマンの英雄ロタールの墓がある、聖堂の浮き彫り。磔刑のイエスが左にひょう〜っと傾いているところが、ヴェローナの青銅扉を思い出させる。他にも、完全な形で残っていた頃をぜひ見て見たかったと、思わせる魅力的な浮き彫りがあちこちにある。
San Pietro e Santa Maria Maggiore
古代ローマに憧れたんだろうなというような、堂々としたロマネスクアーチを積み上げたバジリカの後陣だけが残っている。これだけでも嬉しくなったが、こんなすごいものが、普通の家とくっついて庶民的な音が聞こえてきたりするのも面白い。
旅について:プーリアへ行くならやっぱりプーリアだけにしたい。プーリアには素晴らしい場所がいくらでもあって、日本人には知られていないけれど素敵な場所の宝庫だから。前回はフォッジャの神父(現地で出会った!)宅へ長期滞在していて、あちこち回ったんだけれど、ここへ行った時に一泊してみたいと強く思ったのを覚えている。夕方と明け方の風景がなかなか素敵で、写真家の間では知られているのだ。ここには、冒頭の写真の場所にある、ゴージャスなホテルがあって、アドリア海が見渡せるレストランやバルコニーがある。でも巡礼者なんだから、修道院で怒られるのもいいかなーとか。みんなはどう考えるか、楽しみです。
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