美術家名や都市などブログ内を検索してね

2018年1月16日火曜日

ナポリ:守護聖人サン・ジェンナーロ

9月は私のずっと追っているルッカのヴォルト・サントの祭りであるルミナーラもありますが、これは聖十字架高揚の日と言うキリスト教カレンダーにあわせたものです。

ナポリではサン・ジェンナーロの祭りがあります。イタリア3大祭りの一つと言われ、大変な信仰を集めてきました。ナポリで聖ジェンナーロを知らない人は居ません。史実としては証明できないけれど、キリスト教が公認されるちょっと前、迫害が最も激しかった頃305年に殉教したと言われるカトリックとギリシャ正教の聖人です。

1389年には有名な「血の奇跡」の話が記されています。聖人の血は殉教後、何世紀も大切に保存されてきましたが、カピカピに乾いた状態でアンフォラ(ガラスの小瓶)に保存されています。それが溶けるという奇跡です。溶け方はその時によって色々あったようで、様々な記録があります。この奇跡は熱狂的なナポリ人の間に浸透し、広まりました。


去年の聖ジェンナーロの祝日です。金の聖遺物容器の上方にある丸い容器が、聖血の瓶です。いつものミサに聖ジェンナーロの祈りが加わり、人々が期待を込めて、血が溶けるのは今か今かと待って居ます。


面白いのは、ニューヨークの大イベントの一つにもなっていることです。ニューヨークは元はオランダの植民地でしたが、イギリスが支配してから英語風に発音を変え現在に至っています。ここへは南イタリアから大勢の移民が入植し、リトルイタリーと言うイタリア人街が一つの文化を形成しました。今ではリトルイタリー自身も意味がなくなったようですが、入植当時英語の分からないイタリア人たちが、支え合いながら生きていく中で故郷の聖ジェンナーロの祭りを心の支えにしてきたのです。


2016年のニューヨークのポスターです。宗教行事、行列、食べ物、音楽、ゲームとあるように、イタリア由来のカンネッローニなどのお菓子が出るのも有名です。聖人の像は祝福というより、Vサインをしているように見えます。手にはなぜか二本の瓶を持っていて、ワインかソースみたいです。


こちらは2015年の祭りに合わせて製作されたナポリのストリート・アートです。高さ15メートルに及ぶ聖人の肖像画は、オランダ系のナポリ人 Jorit Agoch という画家が無料で製作したそうです。ナポリの国際性を感じさせます。最初彼の肖像が民族主義(人種差別)的観点で問題になったそうですが、彼はナポリの街で普通に暮らす人をモデルに、要するにカラヴァッジョのようにした、ということで問題は解決し、作品は賞賛されています。この作品は司教座聖堂サン・ジェンナーロからすぐ近くにあります。


古代から大都市だったナポリの司教座聖堂です。残念ながら大聖堂広場が無く!道に面しているので良い写真を取るのは苦しいです。外から見るとイタリア式のゴシック聖堂で両サイドの塔が、塔とは思えぬ低さというか、無いのが不思議な感じです。


堂内では司教座聖堂らしい堂々とした身廊が目に入ります。でも私にとってはそれ以上に、身廊からは見えない礼拝堂や、4世紀の洗礼堂がさらに魅力的です。


残念ながら剥がれ落ちてしまっている部分も少なくありませんが、何しろ4世紀のモザイクです。私がこの聖堂へ訪れた最大の理由が、このモザイクが見たかったからでした。初期キリスト教時代の作品は、数が非常に少なく限定的な地域にあるだけでなく、質が高いのが素晴らしい。神を表す象徴的な文字、その周囲の後光を、たっぷりした襞のカーテンで表現しているところも感心します。元は別々だった建物です。


聖ジェンナーロの名前を冠したカタコンベもあります。ローマにあるカタコンベよりずっと大きく、状態の良いフレスコも残っています。まるで地下帝国の様相です。これは大美術館カポディモンテの麓にあります。

旅について:ナポリには芸術性の高い、壮大な作品がたくさんあります。フィレンツェやローマのように、街をぶらぶらしていれば見える訳ではなく、色々なものが隠されているという印象も受けるほど、実際には、街を堪能するには多くの時間が必要です。私の旅は9月の初旬から中旬にかけてですが、聖ジェンナーロの祭りは9月の19日ですので、もしナポリに行くなら激突する可能性があります。祭りには良い面と悪い面があります。特別な機会であると同時に、物価が上がったり、ゆっくり大聖堂が見られなかったり。人それぞれでしょうが、みんなはどう考えるかな?


0 件のコメント:

コメントを投稿