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バジリカータ州は、イタリア語を日常的に話す人の割合が、イタリア全州の平均値よりもかなり低く、多くの人はイタリア語と方言を併用するようだ。しかし全くイタリア語でない独自の言語が残る地域もある。イタリアにはそういう、特別区のような場所が幾つかある。例えばクールマイユールなどちょっと欧米語を知っていればすぐ分かるように、町の名自体が完全にフランス語だし、ボルツァーノなどはボーゼンと、イタリア語とドイツ語の両方の表記が当然のようになっている。しかしバジリカータの場合は、フランスやドイツのような大国と地繋がりで、どちらの文化圏が優勢か分からないような地域とは違う。純粋に数世紀に渡って作られた、様々な民族が入り乱れて作られた文化が残っているのだ。ということはそれだけ地域性が強く、観光地化されていないということでもある。
日本語版ウィキペディアに「ゆかりの人物」フランシス・コッポラ(彼の祖父がバジリカータ出身)などと紹介されるほど、日本人の知っている大物は無関係な地域だ。でもイタリア史をする者には、近代イタリアの初期の重要な首相や、マフィアや南部問題における、ある意味で英雄のような存在クロッコがいたり、中世をする者にとっては、何と言っても12世紀ルネサンスを開いたノルマン王朝の痕跡が残る場所でもある。文学や古典芸術を考える上でも、ウェルギリウスに並び評価された、紀元前の詩人ホラティウスや、古楽を知っている人にはジェズアルドもいる。激情的な音楽感覚を持っていた彼は、妻と彼女の愛人を殺したことでも有名だ。キリストの名の下、完全な平等が実現される、夢のような「太陽の都」を具現化すべく、占星術で示された時に革命を起こした、中世の修道士トンマーゾ・カンパネッラはカラーブリア州の出身だが、この地でユートピアを起こしたのだった。あっという間に、仲間の裏切りで逮捕され拷問の末投獄されてしまうが、スペイン支配から逃れ、自由に生きたいと願う民衆は彼に従ったのだった。カンパネッラの名を聞いたことがある人は、結構いるのではないか。なぜなら宮沢賢治が、「銀河鉄道の夜」の登場人物にその名を与えているからだ。賢治はトンマーゾに心酔していたに違いなく、彼自身も岩手にイーハトーブ(イワテのエスペラント語から)という理想郷を作ろうとした。私は「太陽の都」が大好きだ。どの子も平等に教育の機会が与えられ、自由に研究ができ、健康的な食事が出され、みんなで運営する都は、現在の日本の状態からも程遠い。人権など存在しなかった中世真っ只中に生きた、彼の夢見た地を訪れるのもいいだろう。行く前に是非読みたい本は「太陽の都」と反戦の芸術家カルロ・レーヴィの作品だろう。
面積の半分近くが山岳地帯と丘陵地で、平野は全体の10%に満たない。それに伴い丘に張り付いた町の景観がなかなか面白い。
メルフィのノルマン人要塞、メタポントのギリシャ神殿、世界遺産マテーラの洞窟住居群、ブラジルみたいな山上の巨大彫刻もあったりするし、ターラントは子供の頃から知っていて、是非行ってみたい場所だ。
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